歯牙移植とは?

歯牙移植とは、ご自身の歯(主に親知らずや矯正治療で抜歯予定の歯)を、歯を失った部位に移植する治療方法です。
通常、歯を失った場合の治療方法としては、インプラント、ブリッジ、入れ歯などがありますが、歯牙移植はこれらに加えてもう1つの選択肢となります。
歯牙移植の大きな特徴は、人工物ではなくご自身の歯を使用することです。そのため、歯根膜という組織も一緒に移植されるため、天然歯に近い機能を回復することができます。
歯の移植技術は従来からありましたが、CTの普及やサージカルガイド(手術ガイド)の発展により、より精度の高い治療が可能になっています。
歯根膜の重要性
歯根膜とは、歯の根と顎の骨の間に存在する約0.2mmの薄い結合組織です。この組織には豊富な血管や神経、線維が含まれており、歯に栄養を供給して、咬合圧を緩衝する重要な役割を担っています。
インプラントと異なり、歯牙移植では歯根膜も一緒に移植されるため、歯周病への抵抗力や自然な噛み心地が得られるという大きな利点があります。
このようなお悩みはありませんか?
- インプラント治療は費用が高くて躊躇している
- できるだけ自分の歯で噛めるようになりたい
- 天然歯のような自然な噛み心地を得たい
- 入れ歯は違和感があり使いづらそう
など
大阪のうえほんまちかづ歯科口腔外科では、歯を失った場合の選択肢として「歯牙移植」という治療をご提案しています。ご自身の歯を利用するこの方法は、条件が合えば非常に有益な治療です。まずは一度お気軽にご相談ください。
歯牙移植が適応となるケース
歯牙移植が適応となる主なケースは以下の通りです。
移植するための健康な歯(ドナー歯)がある
- 主に親知らずや矯正治療で抜歯予定の歯を使用します
- ドナー歯のサイズと移植先の状態が合っていることが重要です
次のような状況で歯を失った場合
- 虫歯などで抜歯が必要になった歯がある
- 事故やケガで歯を失った
- 先天的に歯がない部位がある
顎の骨の状態が良好である
- 重度の歯周病などで骨が大きく失われている場合は適応外となることもあります
当院では、CT検査などで詳細に診断し、歯牙移植が適応かどうかを判断いたします。特に親知らずを使用したケースが多く、矯正治療と組み合わせて行うケースもあります。
歯牙移植のメリット・デメリット
歯牙移植のメリット
歯根膜が残せる
- 天然歯と同じような噛み心地が得られます
- 歯周病に対する防御能力があります
- 噛んだ時の衝撃を和らげるクッション機能があります
ご自身の歯を使える
- 人工物ではなく自分の歯なので親和性が高いです
- 自然な見た目と機能が期待できます
費用面でのメリット
- 条件を満たせば保険適用となり、インプラントと比べて費用が抑えられます
歯牙移植のデメリット
成功率
- インプラント(成功率95%以上)と比較すると、歯牙移植の成功率は一般的に60~90%とされています
アンキローシス(骨性癒着)のリスク
- 歯と骨の境目がなくなるように癒着してしまうことがあります
- 将来的に抜歯が必要になった場合、処置が複雑になることがあります
適応条件
- 移植に適した歯(ドナー)があること、骨の状態が良好であることなど、条件を満たす必要があります
外科的処置が必要
- 移植のための手術が必要となります
当院の歯牙移植の特徴

CTとサージカルガイドを用いた精密治療
3次元的に正確な位置に移植するために、CTで詳細に診断を行っています。これにより移植先の骨の状態や神経の位置を正確に把握することができます。また、インプラント治療で使用するようなサージカルガイドを応用することで、精度の高い移植が可能となり、より安全で確実な治療を提供しています。
3Dプリンターの活用
移植する歯のダミーを事前に3Dプリンターで作製して、移植先の骨の形状を適切に整えることができます。このように事前に準備することで、歯を抜いてから移植するまでの時間を大幅に短縮でき、生着率の向上につながります。
外部環境にさらされる時間が短いほど移植歯の生存率が高まるため、治療の成功率向上に大きく貢献しています。
口腔外科専門医による治療
口腔外科専門医である院長が治療を担当しています。大学病院での豊富な経験を活かした質の高い治療を提供することができ、複雑なケースや難症例にも対応可能です。専門的な知識と技術に基づいた安全で確実な治療をご提供いたします。
矯正治療との連携
必要に応じて、矯正治療と組み合わせた総合的な治療計画を立案しています。矯正治療で抜歯が必要な場合、その歯を歯牙移植のドナーとして有効活用するなど、患者様の状況に合わせた柔軟な対応が可能です。歯科全体を見据えた包括的なアプローチにより、最適な口腔環境の実現を目指します。
歯牙移植の流れ
1初診・検査
まずは詳細な口腔内検査、レントゲン、CT撮影を行い、お口の中の状態を正確に把握します。その結果をもとに、歯牙移植の可能性や適応について診断を行い、患者様の状態に最適な治療方法をご提案いたします。
2治療計画の立案
移植に適したドナー歯(主に親知らずなど)を選定して、CT画像をもとに移植先の状態を詳しく評価します。また、コンピューターを用いたシミュレーションにより、移植の精度と成功率を高めるための計画を立てます。必要に応じて3Dプリンターでダミーを作製して、事前準備を整えます。
3移植手術
まず移植先の歯を抜歯して、周囲を丁寧に清掃します。続いてドナーとなる歯(親知らずなど)を慎重に抜歯して、移植先に適切に配置します。この時、噛み合わせに支障がないように細かく調整を行い、最後に糸で縫合して固定します。骨との過度な癒着を防ぐために、適切な固定方法を選択します。
4経過観察
術後1週間目に初回のチェックを行い、移植歯の状態や周囲組織の治癒状況を確認します。さらに術後2週間目に再度チェックを行い、移植歯の安定度を評価します。この段階で問題がなければ、次のステップに進みます。
5根管治療
移植した歯の神経は移植時に切断されるため、根管治療が必要となります。通常、移植後2週間から1ヶ月の時点で根管治療を開始して、感染予防と将来的な歯の健康を確保します。
6仮歯の装着
根管治療後、仮歯を装着します。この段階から徐々に噛む機能が回復して、日常生活での使用が可能になります。仮歯の段階で十分に使用感や適合性を確認して、必要に応じて調整を行います。
7補綴物(被せ物)の装着
移植歯が十分に安定して、問題なく機能するようになったら、最終的な被せ物を装着します。これで治療完了となり、天然歯に近い機能と審美性を回復することができます。治療完了後も定期的なメンテナンスを行うことで、長期的な成功を目指します。
治療期間は個人差がありますが、最終的に問題なく使えるようになるまで約3ヶ月程度かかります。これはインプラント治療よりも短い期間で済むことが多いです。
移植後のケアと経過
歯牙移植後は、移植した歯が生着して、長く使えるようにするためのケアが重要です。
術後の注意点
- 術後は移植部位を強く刺激しないようにしましょう
- 柔らかい食べ物を中心にして、移植歯に直接力がかからないようにします
- 処方された抗生物質や痛み止めは指示通りに服用してください
- 通常の歯磨きは可能ですが、移植部位は優しく丁寧に行ってください
など
経過観察
- 術後1週間目に初回のチェック
- 術後2週間目に再度チェック
- 術後の状態に応じて根管治療の開始時期を決定します
- 定期的な検診で移植歯の状態を確認していきます
機能回復の目安
- 術後2週間~1ヶ月:根管治療を開始できる程度に固定
- 術後2~3ヶ月:問題なく食事ができる程度に安定
- インプラントと比較すると、比較的早い段階から機能回復が期待できます
長期的な経過
- 移植歯は定期的なメンテナンスが必要です
- 6ヶ月ごとの定期検診をおすすめします
- 適切なケアと定期検診により、長期間使用することが可能です
移植歯はご自身の歯ですので、通常の歯と同様にケアすることが大切です。定期的なメンテナンスにより、長く健康的に使い続けることができます。
歯牙移植の費用
歯牙移植の費用は、治療内容や保険適用の有無によって異なります。
保険適用となるケース
以下の条件を満たす場合、保険診療が可能です。
- 移植する歯が「親知らず」または「埋伏歯」である
- 骨を削る必要がない場合(抜歯と同時かつ骨を削ることなく移植できる場合)
保険診療の場合(3割負担の目安)
歯牙移植手術 | 5,000~15,000円 |
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※検査や治療内容、親知らずの状態などによって金額は異なります
自費診療となるケース
以下の場合は自費診療となります。
- 骨を削って移植床を作製する必要がある場合
- サージカルガイドを使用する特殊な移植法を行う場合
自費診療の場合
歯牙移植手術 | 110,000円 |
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